ケリー・スレーターに10の質問
2014-06-01 更新
11度のワールドタイトルを始め、世界最高峰のサーフィンレースASPワールドツアーで数々の記録を塗り替えてきたケリー・スレーター。
今シーズンは23年間サポートされてきた「Quiksilver」から決別し、心機一転して引退の節目であるとされている12度目のタイトルを狙い着々とシナリオを組み立てています。
42歳にして未だ現役でカレントリーダーでもあるケリーにASPが10の質問。
キング、超人、神様、様々な称号を与えられている彼だからこその深い答えがそこにありました。
■Q1
2013年はいくつかの怪我を背負って戦っていましたね。
そして、今シーズンのスタートはプロの道を共に歩んできた’Quiksilver’との決別があったけど、これによってヒートのパフォーマンスに影響が出ましたか？
それとも逆に集中出来るようになりましたか？
■ケリー
両方という答えが正しいね。
まだ戸惑いもあるし、今のところ自信満々という感じでシーズンを送ってはいないんだ。
全てのイベントでコンスタントな結果が続いているという良いニュースがある一方、捨て試合を考えるとまだ確かな数字とは言えない悪いニュースもある。
優勝してトップの位置を固めないと逆戻りになる可能性があるからね。
今でも腰から背中に痛みがあるし、それは大きな問題さ。戦っている時はアドレナリンで痛みを忘れちゃうんだけどね。
■Q2
現在のASPトップ34のメンバーと比較してケリーのサーフィンで優勢な部分はどこですか？
逆に弱い部分は？
■ケリー
マーガレットリバー、ベルズ、リオには弱いと思うけど、以上の場所での結果には満足している。
自分の強みはカービングにバレル。それに子供の頃に慣れしたんだ小さなビーチブレイクにもアドバンテージがあると感じていた。
でも、今は良い波を求めて旅をした影響でプライオリティや興奮する部分が変わった。
リーフブレイクでのバレル。いわゆる’ドリームウェーブ’の方がベターになっているよ。
■Q3
その質問の答えからしてツアーの他の会場に比べ、マーガレットリバー、ベルズ、リオと続くスケジュールは嫌だったですか？
また、この3つのイベントが続くことに関して自分なりに管理していたことは？
■ケリー
確かにあの3連戦は乗る気では無かったけど、その後のフィジーに勝算があるなら良い移動になるなと感じていたよ。
フィジーを含む4イベントも過去に良い結果を残しているしね。
リオのような不安定でワイドなビーチブレイクはローシードを含めた全ての選手に勝つ可能性がある。
今回はみんな手こずっていたけど、オレはいくつかの僅差のヒートを抜けて結果を残せた。
ところで、真剣に考えていることを話すとフィジーやパイプ、他の候補としてチョープーやJ-bayは’メジャー’としてポイントを2倍にするべきだよ。手始めに3〜4イベントで20.000ポイントかな。賞金は重要では無い。
実現すれば価値があるロケーションが必然的に注目される。ドリームツアーにふさわしくない波の場所も留まることが出来るけど、目立たなくなる。自然に誰もが最高のサーフスポットとの差を考えることになるし、大きな影響があるだろうね。
■Q4
’Quiksilver’との決別を公表した直後、マーガレットリバーのR1で敗退。オンラインのコメンテーターが’ステッカーを外すと違う人物に見えるんじゃない？’と言っていたけど、ステッカーに対する心理に何か信憑性はある？
言い換えるとすれば何十年もボードに貼ってあったものが無くなった時、それは自信喪失に繋がるもの？
■ケリー
今まで慣れていたことを失うこと。例えば、戦うために軍隊や収容所に行くと想像して、それまでの複数の人から突然一人にされて戦う感じかな。
(まだ友人がバックアップしてくれていたから少なくとも精神的なものだけど．．．）
確かに心理的なものは関係ある。でも、リオの終わりには落ち着いたし、フィジーは第二の故郷みたいなものだから、快適なはず。ただ流れに身を任せ、新しい世界を広げるよ(笑)
■Q5
間近に迫ったフィジー、ジェフリーズベイ、タヒチ、ローワー・トラッセルズ。
あなたは全てのイベントで勝率が高く、加えてカレントリーダーです。
その件についてどう考えている？そして、他の選手は何を心配するべき？
■ケリー
みんな準備は整っているだろうし、オレだって同じ。
ツアーのベスト期間だし、ここでの優勝がタイトルに大きく関わるというのが自分の意見さ。
■Q6
私達の業界では’カルト的’なこだわりや、成績よりも潜在能力的な部分に重点を置いていた。
ツアーにいたあなたと同年代の選手の中で10代の頃から’次のケリー’を探していたけど、20代中盤〜後半にはタイトルとは違う自分の道を探してしまった。
彼らは期待され過ぎて精神的に崩れてしまったと思いますか？
■ケリー
今の時代はもっとプレッシャーがあると思う。この前のイベントの時にコロヘ(アンディーノ)とそれについて話したんだ。彼は大きなポテンシャルを秘めた素晴らしいサーファー。期待されている一人さ。
イベントで優勝するには才能と同じくらい心理的、精神的、知性が必要なんだ。
ミシェル(ボウレズ)の今年の2勝は98年に日本で優勝したダニー・ウィルスの強さを思い出させるね。
彼はあれ以来、優勝はしていない。異常な出来事だったけど、正しい場所に心を置くことや信念、雑音を消すことを同時に出来れば可能だとも言える。
競争に対するスピリチャルと禅さ。
人々は勝敗と個人的な問題を結びつけることがある。今回の結果は予定されていたとか、騙されたとか。噂によってその話しが膨らむこともあるんだ。
そんなことは信じてはいけないよ。
オレ達は偉大な人生を送るはず。でも、全ての人と繋がっている訳ではないし、理解や信用もしていないのさ。
■Q7
MRは4度のタイトル、カレンとアンディは3度のタイトル。昨年はミックが3度目を決めた。
そして、あなたは11度もタイトルを獲得している。
今ツアーにいる中で3度かそれ以上のタイトルを獲れるサーファーはいると思う？
■ケリー
ジョン・ジョン(フローレンス)とガブリエル(メディナ)はその能力があるし、大きな運命を感じる。
(フィリッペ)トレドは今まで見た中で最も小さな波でのエアーが上手い。
本当に才能がある奴は沢山いるよ。
あとは個人的な決断力と信念、プロとしてのプレッシャーや期待に答える能力などが必要さ。
自分は決して波に恵まれていない小さな町に生まれた。
この小さな生活から抜け出して大きな場所へ向かう自分自身を想像出来たし、強い信念を持っていたんだ。
しかし、みんなが同じことをしたとしよう。毎日のように凄いことが起こると同時に羨ましいという嫉妬が彼らの周囲に出てくる。人々は食料や医薬品、自分自身の満足のために問題に巻き込まれることになるさ。そして、シンプルに他の人の言葉を信じること(両親や子供を除いて。でも、彼らの言葉は全く的外れかも)も出来なくなる。
今まで話した選手は同じアプローチで波に乗る必要があるし、すでにそうしていると思う。
コンテストはただのコンテストだし、この世界の中では大きな意味を持たない。人の一つの部分のスキルの小さな指標に過ぎないよ。
一部の人々はオレのことを執念深いだとか攻撃的だとか、幸運だとか色々言う。
それは全て正解さ。それはいけないこと？
オレ達はダイナミックな生き物だし、様々な気持ちを持って生きていかなければいけないのさ。
■Q8
ツアーの中でフィジーを最も得意と認めますか？
そして、この先も競争に勝ち残ることは出来ると思う？
■ケリー
フィジーをアットホームだと感じる限り、永遠に勝ち目はあると思う。
勝つか負けるかは波次第。適切に良い波を選ぶ。それだけで優勝した経験が何度もあるんだ。
■Q9
大半の選手が6’3、6’6などのボードを使用しているけど、ケリーはもっと短い5’9を中心に乗っているよね。
この背後にある理論とトップ34のメンバーがケリーと同じこと考えないのは何故かな？
■ケリー
その件については話せないね．．．。
■Q10
ケリー・スレーターが12度目のワールドタイトル獲得無しでフルタイムの参戦から逃げる。
これに満足は出来ない？
■ケリー
とてもイライラしている。2012年と2013年は3回も良い場所の良い波で優勝したのに、タイトルを逃してしまったんだからね。
本当に質の良い波、良い場所に重点を置く’メジャー’というアイディアについて考えるべきだと思う。この話をしていると興奮してしまうよ。
すでに素晴らしいキャリアと人生を送っているし、またタイトルが獲れないからって泣くことは無い。日々の生活の中でも素晴らしい機会を与えられているしね。12度目を獲れた場合、ただ戦って勝ち取ったというより、もっと違う大きな意味を持つのかもしれない。
一つのヒート、一つのスコアで左右されてワールドタイトルを逃した経験が3度もある。
人生もスポーツもそんなもんさ。もし、全てが試合の最後や結果だけにあるなら、失敗することになる。学ぶべきことは違うところにあるからね。
負けるってことは今まで学べなかったことを見つけられる場面。負けた時こそ誰が親友かを知ることが出来る。そして、あなたが勝った場合に最も狼狽した人を避けるべきさ。
■BCM
1999年からスタートしたフィジーでのイベントでケリーは4度も優勝経験があります。
特に昨年はQFでパーフェクト20をスコアしたのを始め、10ポイントを4つもマークしての圧勝。
現在、ツアーのメンバーにいる中でケリーの他にフィジーで優勝した選手は0。
高い確率で優勝を狙える今イベントは6月1日〜13日に開催されます。
ASP公式サイト
http://www.aspworldtour.com/(PC用)
photo: ASP Covered Images
⇒「コンテストリポート」一覧へ