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【特集】“Hurley Japan” 糟谷修自×大橋海人×大原洋人 Q&A

2014-12-26 更新
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2013年の10月、ノースショアのシーズンと2回お届けした「Hurley Japan」チームマネージャー・糟谷修自×8つの質問

あれから約1年、今回は「Hurley Japan」チームを代表する大橋海人、大原洋人を加え、ノースショアのサンセットビーチにある“ハーレーハウス”滞在中にBCMが独占インタビュー。この1年を振り返ってのことや来年の展望などをQ&A形式でお届けします。


■Q1.
まずは大橋海人さんへ。
6月後半から7月前半にかけて開催された南アフリカのプライム参戦、その遠征中に足首を怪我したそうですが、どんな状況だったのですか?


●大橋海人
南アフリカの最終日、お昼のフライト予定で時間があったため、朝に一人でサーフしていた時に足首を痛めました。
これといって大きなワイプアウトがあったなどではなく、繰り返しのレイトテイクオフが原因だったようです。前日のサーフでチューブが中心のライディングだったんですが、担当医からは「その日の影響からじゃないか?」とも言われました。
運が悪かったですね。

■BCM
怪我からの復帰戦となった鴨川のJPSA(9月末)では、あのビッグウェーブでセミファイナルまで進出しましたよね。
足首にはまだボルトが入っていたと聞きましたが、自分的には何パーセントの回復と言える状況のコンテストでしたか?

●大橋海人
鴨川での回復度は80%くらいですかね。骨折だったので、まだ足にボルトが入ったままでしたが、試合中の痛みはなかったです。ボルトが入っていればもう一度折れる心配もないですし、動きが硬いだけかな?(笑)
鴨川には「出れる」と判断しての参戦でしたが、その後に海外の試合も控えていたので、まずは国内で復帰してから臨みたかったという思いもありました。
治療中は「怪我のリハビリ」と「トレーニング」それぞれのメニューをこなしていました。

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■BCM
鴨川の後、宮崎のWQS、ブラジルの6スターと4スター。最後はハワイでのプライム(その後は海南島も)に出場。結果だけ見ると良い成績は残せなかったと思います。
ハワイではオートネーのチャンスを待って毎日会場に足を運び、2戦出場。出場確定の連絡もヒートスタートの少し前だったと聞きました。今回の出場で得るものはありましたか?

●大橋海人
2回、3回と大きな大会に出ることで、確実に自分の経験にはなっています。例えばですが、今回のプライムはハワイの波という意味でも実際にヒート(試合)に臨むことで気付けることもあります。
「あ、ここから乗れるんだ」とか「こういう時は、こっちから回り込むんだな」とか...。
映像で見ている方は、もしかしたらリーフブレイクで規則的に割れているように見えるかもしれませんが、ポジションが少し変わるだけで乗れる波、乗れない波があるし、波のサイズやコンディションによって変わる部分もある。それにカレントも。
トップ選手は皆分かっていると思いますが、フリーサーフィンとはまた違った経験というものもあります。やはり勉強になることは多いですね。

それにある程度のサイズ、波に対しても少しずつですが“慣れ”を感じてきています。今回、試合では良い結果を出せませんでしたが、ビッグサイズへの「恐怖感」もあまりなくなってきていて、どこかリラックスしている自分がいました。この経験は必ず来年につなげて、しっかりと自分のサーフィンができるよう努力したいと思っています。

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■BCM
ちなみに海人君からは、よく「自分のサーフィンを出す、出せた」などのコメントを聞きますが、何かこだわりがあるのかな?

●大橋海人
そうですね。僕は試合に出る時に「しっかりと自分のサーフィンをする」ということにこだわっている時が多いかもしれません。
この良し悪しはまだ分からないのですが、今までの成績を振り返ると勝ち負けにこだわってサーフィンをしている時よりも、「そのコンディションで自分がどんなサーフィンができるのか」ということを考え、それを実行できた時の方が、良い結果が出ることが多いと感じています。
もちろん試合は遊びではありませんし、出るからには勝ちたい、勝たなければならないのですが、だからこそ「自分のBESTパフォーマンスをする」そんな風に考えるようにしています。


■Q2.
次は大原洋人さんへ。
昨年のワールドジュニアの3位入賞で得たプライム出場権。
今年は年初のマンリーでのオーストラリアオープンで9位。まずまずの出だしでしたが、その後ポルトガルのプライムを始め、良い結果が出せていないのではと思います。体の不調やサーフィンの調子が悪いなど何か原因はあるのでしょうか?


●大原洋人
「調子はどう?」と聞かれると悪くはないんです。サーフィンも、モチベーション的な部分も調子は良いです。
でも、昨年に比べると今年は試合であまり良い結果は出せませんでしたね...。

■BCM
昨年はブラジルのワールドジュニアで3位入賞し、世界の注目を集めました。しかし今年のポルトガルではR4敗退という結果でしたが、昨年との違いなどもあったのでしょうか?
やはり、昨年の3位でマークはきつくなっていましたか? 注目されることによるプレッシャーは?

●大原洋人
プレッシャーはあまり感じてません。それに試合中も自分へのマークがきついとかそういう意識もまだあまりないですね。ただ、なんて言うんでしょうか、今年一年の自分の状態と昨年の状態を振り返って比べてみると...。
もしかしたら、昨年の方が「ひとつひとつの試合に集中」できていたのかも知れません。
かと言って、今年が「集中できない」のではなく、もちろん甘く見ているわけでもなく真剣なのですが、去年に比べるとどこかリラックス出来ている自分がいるような感じです。
例えばプライムは試合時間も長いので、その試合中に作戦を立て直したり、色々と「考える」ことができるようになったかなと思います。これが良い方向なのか、悪い方向なのかはまだ分からないですけど・・・。

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■BCM
修自さんからも洋人はプレッシャーに強いという話しを聞いたことあるし、これまで色々なビッグネームと対戦、それどころか倒してきていますよね。
相手がビッグネームだと「逆に燃える」なんて話しも聞いたことがありますが、実際には?

●大原洋人
正直、やはり自分の調子、状態によりますね...。
気持ちに迷いがあったり、例えば波とボードの調子がしっくりこなかったりと何か不安要素があると相手のサーフィンが気になってしまうし、名前負けしてしまうこともあります。
でも、そういう迷いがなくサーフィンの調子も良い時は、相手が誰だろうと「やってやる!」と思えるし、思うようにしてます。
今回もハワイの波のこと、ボードの相性などは修自さんが詳しくアドバイスもくれるので参考にしています。

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■BCM
大きい波でのサーフィンはどうですか?

●大原洋人
今回はブラジルからハワイに入ってきたこともあり、正直、いきなりの波のデカさにビビリました。(笑)
サイズのある波でのサーフィンは、本音をいうとまだ怖いという気持ちもあるので、もっともっと経験を積まなければなりません。


■Q3.ここからはみなさんに。
最近のASPはプライムイベントが重要視されていて、WQSのスターイベントで優勝してもランキングがなかなか上がりにくい状況ですが、そのプライムにはトップ34の選手の出場が義務付けられているため、よりハードルが高くなっているのではと感じています。
それはイコール、クオリファイを果たしたら、すぐにWCTで通用する選手しか残れないということですし、目標がクオリファイで終わりでは無く、もう少し先のWCTで活躍するというところまで置かないと現在のWQSでクオリファイ圏内の10位以内に入るのは難しいのではと感じています。
この壁の厚さを乗り越えるための取り組みなどは、何かあるのでしょうか。


●糟谷修自
彼らほどのレベルのサーファーがさらに上を目指すからには、専門のコーチによるしっかりとしたサポートが必要です。他のスポーツを見れば分かりますが、日本を代表するような選手が、たったひとりで世界と戦うことはありませんよね。
技術、知識、経験的な部分もそうですが、メンタル面も含め、本人だけじゃ分からない、気づかない部分をアドバイスしていく。選手の調子が最も上がっていく、そのピークをしかるべきところに持っていく。それが私達の仕事だと思っています。

試合だけを振り返ると、今年は良い結果を残せませんでした。
しかし、2人からのコメントにもあるように、今年一年の経験はまた来年に活きるものですし、試合の勝ち負けは“○○で負けた”などの敗因が必ずあります。その敗因を考え、彼らの「弱い部分」を強化するしかないと思っています。

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■BCM
今年の敗因の中で目立っていたのは?

●大橋海人
波に乗れない。良い波を待ち続けて終わってしまったり、優先権をまだ上手く使いこなせていないのかも...。

●大原洋人
技が決まらずワイプアウトするケースが多かったかもしれません。例えば、練習の時でも決まらないような技を仕掛けてワイプアウトしてしまったり...。

■BCM
それはなぜ?試合中にアドレナリンが出て難易度が高い動きにチャレンジしてしまうのかな?

●大原洋人
分かりません。でも、何かリズムが掴めなかったり、追い込まれてからの動きとか課題はありそうです。自分でも分からない部分やメンタル面も含めてトレーニングしなければなりません。
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■Q4.
「Hurley」チームのジョン・ジョン・フローレンスが活躍し、最後はジョーディ・スミスが優勝したトラッセルズでの『Hurley Pro』ですが、このコンテストはどちらで見ていましたか? その感想は?
『Hurley Pro』を始め、WCTのサーフィンを見ている時、自らがその舞台で戦っているというイメージをしながら見ていたりするのですか?


●糟谷修自
海人と洋人はweb観戦、僕は現地で見ていました。
試合を見てお分かりの通り、WCTサーファーのレベルはかなり上ですが、それはサーフィンの技術だけではなく、波の掴み方やライン。そしてエアーなどを含む高度なテクニックはもちろんのこと、さらにパワーも加わっていますね。
ケリー・スレーターの登場で一気に上がったと言われている世界のサーフィンレベルですが、最近はジョン・ジョン・フローレンスやジュリアン・ウィルソンなど、今の若い世代のサーファーによってさらに上を行くレベルに到達しつつあると感じています。

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■BCM
選手という目線から、あの舞台で「戦える」という実感はあるのでしょうか。

●糟谷修自
プライムや6スターなどの試合を見ていれば分かりますが、結果は必ずWCTサーファーが勝利しているわけではありません。
もちろん、WCTのトップサーファーはかなりのレベルなのは明らかであり、そこに立ち向かうにはもっともっと技術を上げなければならない。しかしひとつの戦略の例という意味では、現在はWQSにもプライオリティのシステムが導入されています。

2人のサーフィンを見ていても、良い波を良い場所から掴んで、なおかつ自分が持てる力を100%出せた時は、WQSのトップサーファーにも負けてはいません。経験、知識、メンタルなど様々な要因・課題もありますが、それらを克服し十分なパフォーマンスが発揮できれば勝てる試合はいくつもあると感じます。

もちろんWQS上位からのクオリファイを果たせたとしても、その先のWCTは更にレベルが上ですが、WCTの舞台はWQSと違って“ポイントブレイク”の場所も多いです。作戦の立て方次第では、試合を有利に運べる可能性もありますし、そこに勝機があるのでは?とも考えています。
そんなに甘くはないのは分かっていますし「日本人は無理」と諦めてしまうことは簡単ですが、「やれること」はまだまだあるということ。僕は二人の可能性を信じていますし、本人たちが精一杯努力しているわけですから、我々も本気でサポートしています。
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■Q5.
来年のスケジュールは?
日本を拠点として戦うのでしょうか?


●大橋海人
来年も拠点は日本となりますが、海外を転戦しながらスターシリーズ、プライムを中心に試合に出ようと考えています。色々な場所の波に乗ってさらに経験を積みたいですね。試合以外にも、写真とかビデオを通じて何か残せたらと考えています。

●大原洋人
これから年末にかけて、スポーツビザを取得するために手続きをしています。このビザが取得できると、アメリカに5年間住めることになるので、来年はアメリカを拠点にしながら、同じくプライム、スターシリーズに参戦予定です。ランキングはギリギリ、どうなるか分かりませんが...。
(今年の大原洋人は99位)
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■Q6.
最後に応援してくれているファンに対してメッセージなどがあればお願いします。


●糟谷修自
試合は勝ち負けの世界ですが、技術面、精神面、時には運の要素もあったりと、様々な要因、過程が存在します。日々トレーニングを続けていても、調子が良い時もあれば、悪い時もある。スポーツですから、思わぬ怪我をしてしまうこともあります。
今年一年、試合の結果は出せていないけど、負けた原因があるのなら、そこはシッカリと修正して日々トレーニングを続けるしかありません。そういった若い選手達に注目して頂くことが、本人たちの力にもなります。私としても、そんな彼らを引き続き応援して頂けると嬉しいです。


2014年の二人の成績をまとめると大橋海人はWQSランキング125位(2013年は120位)で、最高成績は5スターの25位。
大原洋人は99位(2013年は149位)で、最高成績は6スターの9位。

クオリファイ圏内が10位以内ということを考えると順位的には厳しい状況。クオリファイを果たすために具体的な数字を示すとプライムか6スターでの優勝か上位入賞は確実に必要ですが、逆にそこをクリアし、他にいくつかの上位入賞があれば達成可能な目標といえます。

今回のインタビューを通して大橋海人、大原洋人の二人も現状に甘んじてはいなく、世界を目指す前向きなエネルギーや、ポジティブな雰囲気を感じることができました。

Hurleyが掲げるコンセプトのひとつ “innovation(イノベーション = 革新的)”という言葉には、若い世代に表現の場を与え、可能性を与えていきたいという思いもこめられています。
トップ・アスリートブランド「NIKE」資本のもと、世界のトップサーファー、特に若い世代のサーファーのサポートに力を入れている“Hurley”。
そして、世界基準では一般的になっているコーチングのシステムを早くから取り入れている“Hurley Japan”。

まだ課題点は多いものの、一つ一つを積み重ねていくことで、その道が開かれる瞬間が本当に来るのかもしれません。
コンペティション・サーフィンの最高峰「ASP」も、新たに「WSL」となり進化していく2015年。BCMでは世界で戦う日本人サーファーの挑戦を今後も注目していく予定です。お楽しみに。


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今年、日本国内でもビッグウェイブの写真を残していた関本海渡。肩の怪我を克服し2年振りのノースショアにチャージ。

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ビッグサイズでのサーフィンに備え、ビーチでの体力作りも欠かさないという河村海沙。来年も国内/海外の各コンテストに参戦予定。初戦 VOLCOMパイププロに照準を合わせて調整中。

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大橋海人/パイプラインでのひとコマ。このテイクオフ後のワイプアウトシーンは、世界中のサーファーが注目する“SURFER POLL”にノミネート。

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先月で18歳になった大原洋人は、2014年のQSランキングを99位(日本人最高位)でフィニッシュ。来年は拠点をアメリカに置いて海外を転戦予定。

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昨年同様、今年もHurleyハウスで密着取材を行ったフォトグラファー“yoge”。
「Hurleyハウスのメンバー全員が、それぞれの目標を持って日々トレーニングしていますよ。」ビックサイズへのチャージやその行動力、姿勢から、常にパワーをもらいプッシュされているとのこと。

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今回もskypeを使用して現地ハワイに直撃インタビュー。毎日のトレーニングで疲れもある中、夜間の取材にも気持ち良く対応頂き、チームメイト同士の協力体制なども垣間見ることができました。ご協力ありがとうございました。


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取材協力&提供 Hurley Japan/Terrestrical Inc
All photo by colorsmag“yoge”