『Billabong Pipe Masters』 キングケリーがタイトルレースに猛威を振るう!
2018-12-17 更新
吹き荒れるトレードウィンドに翻弄されている今年の『Billabong Pipe Masters』
13日間もあるウェイティングピリオドの中の僅か3日を選ぶのにも難しい日が続いていましたが、コンテスト初日から2日間のレイデイを経て現地時間12月16日にR2から再開。
新しい北北西ウネリが入り、朝の時点で公式6-10ftレンジ。日中はフェイスで15-20ft、セカンド〜サードリーフまで割れる巨大なウネリに成長して出口が閉じてしまうバレルが多く、難しいコンディションでしたが、いくつかの見応えあるバレルもあり。
時間短縮のためにマンオンマンのヒートが同時に二つ進行するオーバーラッピングヒートを利用して一気にR3まで進行。
ファイナルデイを戦うベスト12が決定しました。
日曜日にも重なり、世界最大のサーフィンショーを見るためにパイプライン/バックドアからOTW〜ロックパイルまで膨れ上がっていたギャラリー。
この日の主役はガブリエル・メディナ(BRA)、ジュリアン・ウィルソン(AUS)、フィリッペ・トレド(BRA)の3人のタイトルコンテンダー。
トライアルで優勝してワイルドカード枠を得て巨大なパイプラインで9.17のハイエストスコアをマークしたライアン・カリナン(AUS ・写真下)、これが引退試合のジョエル・パーキンソン(AUS)
そして、怪我から復帰したキング・ケリー・スレーター(USA・写真最上部)
唯一、R2の敗者復活戦を強いられていたフィリッペはオープニングヒートに登場。
2年連続トライアル2位でワイルドカード枠を手に入れたベンジ・ブランド(HAW)にブザーピーターで勝利。
R3ではまず3人の内でガブリエルが最初に登場、ワイルドカードのセス・モニーツ(HAW)と対戦して序盤はビハインドピークからのバックドアのバレルのメイクで6.33をマークしたセスに主導権を握られていましたが、後半の激しいバレル合戦に競り勝ち、R4へ。
セスは参加選手の中で最もパイプラインで時間を費やしているサーファーであり、日本語放送のMC脇田貴之曰く、ガブリエルにとってこの試合で最も重要かもしれないヒートでした。
「今朝起きた時、波を見て興奮したよ。今日は波が大き過ぎると言われていたけど、まだ良いサイズだね。とても楽しかったし、良い波にも乗れた。でも、難しかったかな。すでに次のラウンドに集中している。更に良い波になりそうだし、期待している。もっとバレルに入りたいね」
ツアーの他のイベントと全く違うタイプのパイプライン/バックドアの波。
特にサイズが上がった時はサーフボードを変えてくる選手が多く、その中でも絶大な支持を得ている「ウェイド・トコロ」シェイプのボードをこの日のガブリエルは使用。
「RipCurl」のチームメイトで今シーズン引退したミック・ファニングがハワイで使用していたのがきっかけで、彼のボードに乗ると自信が付くと話していました。
ちなみに対戦相手のセスや、ケリーも「ウェイド・トコロ」シェイプを使用。日本語放送のMC脇田貴之も愛用しています。
ガブリエルの勝利を横目にパドルアウトしたジュリアンは特に波が不安定な時間帯にあたり、ミゲル・プーポ(BRA)とのバックアップスコアを僅かに伸ばすような勝負に辛くも勝利。
ミゲルがパイプライン、ジュリアンがバックドアに同時にテイクオフした波でスコアした6.00が決め手になっていました。
「自分が持っている全ての経験を活かした。パイプラインかバックドア、どちらに乗るかで運命が決まったね。自分のポジションがチャンスを与えてくれ、決して諦めなかった。今年は怪我に悩まされたけど、全てのタイミングが上手く合い、良いパフォーマンスが出来て嬉しいよ」
今シーズンのジュリアンは開幕戦の約6週間前にマウンテンバイクでのトレーニング中に転倒事故、肩鎖関節を脱臼。
2週間前にはモデルのアシュリー・オズボーンとの間に第一子、オリビアを授かるなど人生の良いこと悪いことが僅かな期間に訪れた状態で開幕戦に出場して見事に優勝。
タイトルコンテンダーの中では『Billabong Pipe Masters』で2014年に唯一優勝経験があるジュリアン。
タイトルのシナリオは圧倒的にガブリエルに有利ですが、彼の武器でもある「ネバーギブアップ」の精神がぶれなければ、奇跡が起こるかもしれません。
ガブリエル、ジュリアンがR3を勝ち上がり、最後に残されたフィリッペは最終ヒートでケリーと対戦。
実はこの対戦が決まる前までケリーはフィリッペにアドバイスを与えていたそうですが、まさか早いラウンドで対戦するとは思っていなく、R2終了後のインタビューでロジー・ホッジにそのことを突っ込まれると「damm!!」と嘆いていました。
ケリーとフィリッペのカードは、このイベントで7度の最多優勝記録を持つキングケリーの圧勝。
パイプラインでのバレル、抜けてからのターンは全盛期を思わせる一本でしたし、最後のバックドアはディープ。脇田貴之曰く、完璧過ぎて10ポイントは出ないだろうというほどの余裕。
その裏でバックドアのバレルに入ったフィリッペはメイクすれば10ポイントもあり得るポテンシャルだったものの、ドギードアをこじ開けてから持ち堪えることが出来ず...。
ケリーは正面のアングルからは分からないバレル内でのワイプアウトからのリカバリーという離れ業も披露。
一日の最後にギャラリーを大いに楽しませた後、インタビューに答えていました。
「フィリッペとラインナップを共有した。一人のファンとして良い戦いや、最後に逆転するところも見たかった。それでも最後は良い戦いになったよね。私達はメールのやり取りをする仲だし、本気で彼を助けたいと思っていたのさ。まさか直接対決するとはね...。ヒートは楽しかったし、良い波が沢山あって結構乗れたよ。勝てたのは幸運もあった。フィリッペは本当に良いバックドアに乗れていなかったんだ。これは経験の差。波が良く見えてなかったのさ」
ここでタイトルレースからの脱落が決定したフィリッペ。
今シーズンは早くからタイトル争いに絡み、苦手なタヒチ戦を克服するために得意の『Vans US Open of Surfing』を蹴って早くから現地入り。
見事3位に入っていましたが、もう一つの重要な鍵だったこの最終戦は一歩踏み込めず、良い時のパイプラインにフィリッペの姿は無かったと言われています。
タヒチと違ってここはローカルとの関係も大きく左右されるため、2015年にJOBことジェイミー・オブライエンの協力で優勝、ワールドタイトルも獲得したエイドリアーノ・デ・ソウザ(BRA)のように何かを変えないとタイトルは難しいのかもしれません。
ガブリエル、ジュリアンの二人に絞られたタイトルレースのシナリオ。
ガブリエルはジュリアンの結果に関わらず、SFを勝ち上がった時点でタイトルが決定。
ガブリエルが3位になった場合、ジュリアンは優勝がタイトルの条件。
ガブリエルが5位以下の場合、ジュリアンはファイナル進出がタイトルの条件。
ハワイアンにとってはワールドタイトルよりも価値があると言われているハレイワ、サンセットビーチ、パイプラインの3イベントで構成されるトリプルクラウンのタイトル。
ジェシー・メンデス(BRA)がカレントリーダー、ハレイワで優勝したパーコことジョエル・パーキンソン(AUS)が2位、サンセットビーチで優勝したジークことエゼキエル・ラウ(HAW)が3位。4位はジョーディ・スミス(ZAF)、5位はジョアン・ドゥルー(FRA)
この5名によるタイトル争い、まずはR3でジェシーとジークが直接対決の末にジェシーが勝利してジークは脱落。
その他の4名はまだイベントに残っており、シナリオは以下の通り。
ジェシーが9位の場合、ジョーディとジョアンは優勝、パーコは5位でタイトル獲得。
ジェシーが5位の場合、パーコは3位でタイトル獲得。ジョーディとジョアンは脱落。
ジェシーが3位の場合、パーコは2位でタイトル獲得。
ジェシーが2位の場合、パーコは優勝でタイトル獲得。
「明日は人生最後のコンテストの日になるだろう。楽しみたいね。明日を最後にWSLのイベントに再び参加することはないよ」
R3では五十嵐カノア(JPN)を相手に序盤からバックドアのバレルを抜けて8.77をスコアしたパーコ。
実はこの時乗っていたハレイワでのウィニングボードはすでにひびが入っており、このライディングで折れてしまうことに。
それでもチェンジしたボードで後半にはパイプラインでも小さなバレルをメイクしてバックアップスコアを重ね、僅か1本しか乗れなかったカノアに圧勝。
4度目のトリプルクラウン獲得で引退の花道を飾るという夢のような話も現実味を帯びてきました。
ネクストコールは現地時間12月17日の早朝7時30分(日本時間の18日午前2時30分)
オフィシャルフォーキャストの「Surfline」によると北北西ウネリはピークを過ぎる予想。
風は弱い東から東北東に変わり、強まる傾向となる見込み。
ウェイティングピリオドの残りの予想を考慮すると明日がファイナルデイになる可能性が高いでしょう。
なお、今年も公式サイトでは日本語放送が行われています。
脇田貴之、鈴木彩加による分かりやすい解説はコンテストをより面白くしてくれるので、ぜひ以下のリンクからライブを楽しんでみてください!
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