From BCM.ミュージック「エモコア」
2003-05-06 更新
ミュージックコラム第2回目はエモコアです。メロコアではないのであしからず・・・どちらもパンクを基調としているのですが、エモのほうがよりハードコアに関わりがあります。90年前後のハードコアシーンの中、次第にバイオレンスに、そしてメタリックに変化していくのとは別の流れで、元オールドスクーラー達が集まって出来たFUGAZI、DAG ASTY、QUIKSANDといったバンドらがハードコアのサウンドにエモーショョナルなメロディやダイナミズムを持ち込みました。
それを受けてREVERATIONやDISCHORDといった名門ハードコアレーベルが、このサウンドをポストハードコアとして位置付けこういったタイプのバンドといくつもサインし、またTEXAS IS THE REASON、SENSE FIELDといったバンドらがメロコアとはまた違ったオルタナティブな要素(SENS FIELDのアルバム「Building」はNILVARNAのスマッシュヒット2ndアルバム「Nevermind」と同じプロデューサーのアンディ・ウォレス!)の泣きメロを乗せた事で一気に広がりを見せ、全世界にフォロワーを生み出させました。
そして現在では、ポップパンクよりの音からUK産メロディーメイカーと言っても遜色のないソフトロックよりの音、そしてハードコアと言う言葉がもっとも似合いそうな“スクリーモ”と呼ばれるメロディを排除した絶叫ボーカル系、また荘厳でプログレッシヴな音、とシーンの成熟と細分化が進んでいるため単純に「エモ」とカテゴライズされるようになりました。
中でも最初に上げたポップパンクよりのバントの曲は、よくサーフィンビデオにも使われています。その例を挙げますとホブグッド兄弟のシグネイチャービデオ「ALL THA WAY LIVE」ではFACE TO FACEがINXAS(!) をカバーした「Don’t change」が使われています。またCJのパートではTHE GET UP KIDSの「10 minutes」が使われていて、このパートを見た後はサーフィンしたい指数をかなり上げさせられます。他に挙げますと23歳以下のホットサーファーを扱った「MOMENTUM Under the Influence」の中ではタジのパートで、あのビースティーボーイズのレーベル、グランドロイヤルからアルバムをリリースしたAT THE DRIVE INが吐き捨てるようなスクリームを聞かせてくれると。続いて登場するCJのパートでJIMMY EAT WORLDがロックよりの音を聞かせてくれます。更にJベイのパートでは実験的なエモバンドのPINBACKが彼らの楽曲の中で最もワイルドな「Prog」という曲が使われ、このポイントのスケールの大きさをよりいっそう際立たせてくれます。またテイラー・スティールが原点に返って作った「HIT&RUN」のベンジ・ウェザリーのパートでも、THE GET UP KIDSの「Shorty」が使われていますが、ベンジのおふざけ精神からかエンドロールでは「Long Goodnight」という別の曲名が表記されています。
さて、今後このシーンはどうなっていくのでしょうか?思うにNEW FOUND GLORYなどのポップよりのバンドが中心となる一部のメジャーバンドとインディーズバンドの境界線が太くなり、その他のサウンドのバンドはアンダーグランドな展開を余儀なくされそうです。また近頃はTHE PROMISE RING等、長らくシーンの牽引役を担ってきたバンドが相次いで解散しムーブメントとしては一段落ついたと言わざるをえない状況です。
最後に最もお奨めのバンドを紹介しますと、やはりTHE GET UP KIDSでしょう。彼らの魅力はなんといっても一度聞いたら耳から離れないメロディー&メインVo.マット・プリオールの通りの良い高音ハスキーボイス、加えて年にライブを200本こなすほどのエネルギーとが合わさったバンドアンサンブルです。ロックを好きな人なら是非一度彼らの作品を聞いて見てください。「ON A WIRE」がレイテストアルバムですが2ndの「SOMETHING TO WRITE HOME ABOUT」の方がマスアピール度が高いと思います。また日・米と二つある彼らのオフィシャルサイトでもいくつかのビデオやシングルを視聴できますので、そちらをチェックしてみるのも良いかもしれません。彼らには、先日の来日公演で日程が重なっていたPERL JAMのように、ブームが過ぎた後も末永く作品を発表していって欲しいものです。