【東京オリンピックサーフィン競技】最終日
2021-07-28 更新
2016年に東京オリンピックの追加種目として決まってから5年。
誰もが予想をしていなかった困難を乗り越え、2021年に無観客ながら世界トップのサーファーによる競技が開催!
歴史に残るオリンピック最初のメダリストに二人の日本人が選ばれました!
五十嵐カノアの銀と都筑有夢路の銅
PHOTO: ISA / Sean Evans
当初のスケジュールでは7月25日〜8月1日の8日間の4日間を使用して大会が行われる予定でしたが、ゆっくりと東海上を北上した台風8号の進路を考慮して1日前倒しでファイナルまで行う予想外の変更があり、大会3日目の27日に最終日を迎えました。
朝7時から夕方まで休みなく進行したマラソンデイ。
会場の志田下はヘッドオーバーサイズの強いオンショアで難しく、ハードなコンディション。
大会初日、2日目に関してもハードな波でサーフィンの技術はもちろん、いかに体力と集中力を維持し続けていくのかも重要なトライアスロンのような大会でした。
その中で最終日に残った男女8名ずつの大半はCT選手や元CT選手。
日本代表「波乗りジャパン」では五十嵐カノア、大原洋人、都筑有夢路が残るホスト国と堂々の成績。
思えば2018年に伊良湖で開催された『2018 Urban Research ISA World Surfing Games』で初の金メダルを獲得して以来、ISAでは2019年に団体銅メダル、2021年に団体銀メダルと日本は世界の舞台で著しい活躍を見せています。
すでにCTの舞台で活躍している五十嵐カノア、都筑有夢路。
そして、前田マヒナ、大原洋人が先頭に立ち、日本のサーフィンは発展を続けているのです。
PHOTO: ISA / Sean Evans
最終日、SFの土壇場でメイクしたフルローテーションエアーでブラジル代表のガブリエル・メディナを倒した五十嵐カノアは次のファイナルで同じブラジル代表のイタロ・フェレイラに敗北。
イタロがチームメイトとCTのように興奮してビーチ凱旋をする中、波打ち際で一人泣き崩れていたのが彼の本心なのでしょう。
次のパリオリンピックはタヒチでの開催が決定しており、彼もそこでリペンジをしたいと話しています。
「東京五輪でサーフィンが行われると発表された時、日本のサーフィンに変化が起こったんだ。サーファーが進化していくのを感じることが出来たよ。オリンピックで活躍した日本人選手はもちろんだけど、オリンピックの恩恵を受けている地元のサーファーも沢山いる。すでに日本のサーファーは上手くなっていたけど、それがオリンピックによって後押しされたと感じるね。自分の夢はこれをきっかけにして、日本のサーファー、アジアのサーファーがもっとワールドツアーに参加するようになることさ。アメリカ、オーストラリア、ブラジルと同じように多くのトップサーファーが誕生することを願っているよ」
サーフィンは文化としての面が大きく、他のスポーツとは一線を画すものの、サーフィンが社会的に認められているアメリカ、オーストラリアなどではスポーツや競技としての長い歴史があります。日本でも今回誕生した二人のメダリストを誇りや目標にして多くの子供達がサーフィンを始めてくれることを願います。
それが後に文化としてのサーフィンが更に発展して社会的地位も高くなることに結び付くと信じて。
コンテストに興味がなかったサーファーでも今回のオリンピックには注目してライブ中継を見た方が多かったのでは?
イタロの金メダル物語
PHOTO: ISA / Sean Evans
2019年宮崎でのWSGで遅刻から優勝という「イタロ劇」を演じたブラジル代表のイタロ・フェレイラがファイナルでカノアを相手に凄まじいライディングをして金メダルを獲得。
CT、WSG、オリンピックと3つのタイトルを手に入れた初めてのサーファーになりました。
「これまでの成績は全て自分にとって重要なものだったけど、このオリンピック金メダルに関しては史上初ということで最も意味があるものだね。全てのサーファーがここで歴史を作り、全てのサーファーがこの金メダルの一部なんだよ。自分にとってこのメダルには物語がある。子供の頃、貧しかった自分はクーラーボックスの蓋でサーフィンを始めたんだ。それから初めて本物のサーフボードを手に入れて優勝した。自分はこの育った環境によってスポーツとしての情熱を持っている。オリンピックは人生を変えることが出来ると心から信じているよ。メダリストだけではなく、この歴史的なイベントに出場した全てのサーファーにとってね」
WSGでの「イタロ劇」からオリンピックの「金メダル物語」へ。
ブラジルではサッカーの次にサーフィンが人気スポーツと言われていますが、これでまた夢を持ってサーフィンを始める子供が増えることでしょう。
デューク・カハナモクの意思を受け継いだカリッサ
Photo: ISA / Ben Reed
女子金メダルは4度のワールドチャンピオンに輝き、今シーズンのCTでも圧倒的な成績でトップに立っているアメリカ代表のカリッサ・ムーア。
このオリンピックでも強さを見せ、ファイナルでは南アフリカ代表のビアンカ・ブイテンダグを相手に彼女のシグネチャームーブと言えるパワフルなレイバックでスコアを出して初代女王に輝きました。
「このイベントの規模をとても大きく感じたわ。これまでサーフィンを見たことがなかった多くの人たちに、このスポーツを伝えることができたのは特別なことよ。ハワイアンとしては、デューク・カハナモクの夢が叶ってサーフィンがオリンピックに出場出来ただけでも特別なこと。サーフィンがこのようなレベルで評価されるのは大きな意味があるわ」
Photo: ISA / Ben Reed
五輪水泳の金メダリストであり、現代サーフィンの父と呼ばれるデューク・カハナモクが1912年のストックホルム大会の表彰台で「オリンピックにサーフィンを取り入れて欲しい」と初めて表明し、オリンピックサーフィンの種を蒔いてから1世紀以上。
そのデュークの夢が叶い、同じハワイ出身のカリッサが初の金メダルを獲得したのは特別なことです。
また、今回来日して会場にも足を運んだISA会長のフェルナンド・アギーレ氏もリーフ・フットウェアの創業者の傍ら、オリンピックにサーフィンをという夢を起業家としての視点から追い続け、ようやく達成した立役者の一人。
彼がいなければオリンピック競技としてのサーフィンは今大会になかったのかもしれません。
「デューク・カハナモクは私達のアロハ大使よ。最近、彼のドキュメンタリーを見て彼の人生やいかに無条件に愛と優しさをもって人々に接していたかを知ることが出来たの。彼は世界各地にサーフィンを広め、オリンピックでサーフィンを披露することを夢見ていたのよ。ハワイアンとして彼が行ってきたことを知り、世界中を旅して同じアロハ・スピリットを共有することを私もしていきたい。デュークの夢を実現するために今日ここに集まってくれたISAの皆んなとフェルナンドに心から感謝したい」
国際大会、特にオリンピックではメダル獲得後のスピーチが非常に注目されます。
今回、カリッサのこの言葉がサーフィンの全てを表していると思います。
PHOTO: ISA / Pablo Jimenez
PHOTO: ISA / Pablo Jimenez
男子
金:イタロ・フェレイラ(BRA)
銀:五十嵐カノア(JPN)
銅:オーウェン・ライト(AUS)
女子
金:カリッサ・ムーア(USA)
銀:ビアンカ・ブイテンダグ(RSA)
銅:都筑有夢路(JPN)
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