「サーフィンを頑張るお子様をお持ちの親御様へ」 - F+コラム
2025-09-16 更新
Text by つのだゆき、Photo by Kenji Iida毎年8月に志田で行われるNAMINORI甲子園を、毎年1回は日本の若手というか子供の現状を見ておこう、みたいな気持ちでお手伝いしている。小中高の各選手のサーフィンもみているけど、シーンの雰囲気とか、その年齢層の日本での現状とか、そういったものを見るには全日本選手権とかそういった大仰なものではなくて、こういう草レースではないけど、それ的な幅広い選手層の試合のほうがよく見える。若くしてプロ公認を得た選手も参加していて、まぁ、日本の近未来はここから見えると言ってもいいと思う。

今や何級とかだけではなく、小学生からランキングがつけられたりして、子供同士、親同士のものすごいマウントの取り合い、みたいなことになっていることは想像に難くない。でもはっきり言ってそれ、時間の無駄だと私は思う。そのランキングが、例えばテニスや卓球のように、ジャッジの私感が入らない、ボールが返らなければ負け、みたいに明確に白黒がつくものであればまだいいと思うけど、演技競技の人間による採点には必ずグレーゾーンがあり、それで決まったランキングが実力とは言えないし、だからこそ本人も両親も負ければブーイングということになる。ジャッジへのブーイングに利益は無い。ま、ジャッジがイケてないから、と言ってしまうのは簡単だし、実際にそういうこともあるかもしれない。でも、そういうジャッジのいるところでやってるんだから、それに合わせるしかないわけで、ジャッジがイケてないと思うなら、そこでやらなければいいだけだし、そこで勝ちたいならそこのジャッジが好きなサーフィンを目指せばいい。何度も書いているけど、試合というのはその日そこにいた選手の中で、その日のコンディションで、その日のジャッジ好みのサーフィンをしたものが勝つ、というだけのことであって、それが才能とか実力とか将来性とか、そういうことにはあまり関係ないので、結果やランキングでマウント取りのような子供じみたことはしないほうがステキだと思う。

これは日本に限ったことではなくて、世界中のあらゆるところで名前に1点余計についちゃうようなジャッジはあって、エリート路線に乗っていないキッズの親たちはやきもきするわけだ。それでも本人や親が正しいサーフィンの形が見えていて、それに向かってそれを信じてやっていれば、いつか必ず勝てる場所と時が来る。
今日本の子供のシーンでウケているのは、派手に板の動くサーフィン。ずっとデッキが見えているような、テール支点でクリッと蹴り回すサーフィン。ま、いわば子供のサーフィン。ノーズが浮いて回りやすいようなシェイプの板をうまく操っている。すでにこのシーンで名前の通ってる選手はみんなそんな感じだ。
そりゃそうだよね、そういうサーフィンに点出すわけだから、勝つだろうし、有名にもなる。でもそのサーフィンではせいぜいQSまでしか勝てないので、その先を行こうとすれば大幅なサーフィン改造をせざるを得ない。何なら初めからやり直すレベル。キッズ、ジュニア時代無駄。
無名で実績のない選手の中には何人か、何とかレールを使おうとしている選手もいて、でも1メートル前後の波では難しいし、子供なので脚力はまだ足りないし、そういうサーフィンだと器用に何発も入るというわけでもないので、敗退していくんだけど、私は将来の可能性はこっちの無名選手にあると思う。まぁ、そこでジャッジがテールとレールに大きなポイント差を出してくれればいいんだけど、あのコンディションであの実力での勝負となると、どうしても地味なレールターン1発より派手なテールターン3発のほうに3点ぐらい高くついてしまう。テールターンに点を出さない、というのは難しいようだ。よって、世の中の流れはテールターンになっていく。
そしてコロナでできた悪法のひとつに、地域(リージョン)によってある程度均等にCS枠があるという安全パイ的なものもあって、日本のサーフィンはますますレベルダウンしていく。昔のように全世界フルオープンで普通に上から96人でカット、みたいなことになれば日本大ピンチだ。地域ですら今は危うい。アジア枠ではこの先インドネシアがもっと幅を利かせてくるだろうし、中国、韓国だってやってくるだろう。
今、一生懸命レールでサーフィンをしようとしている無名の勝てないキッズ、自分を信じて頑張ってください。いつか必ずそのサーフィンであってるんだ、って思うときが来るから。そして熱心にビデオ撮影とかしているご両親、もっとしっかりサーフィンを勉強して、今の世界の最新のサーフィンのトレンドや、その差を正確に理解できるように目を鍛えてください。信頼できるコーチもいいけど、結局は一番近くにいるご両親の目がよくないとダメなんですよ。だから私はコーチングをするときには、親にも聞かせるつもりで本人に指示を出しているんです。親、ホント大事。
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