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「オマケのレールマニア」 - F+コラム

2025-10-14 更新
Text by つのだゆき

【スプレーマニア(全3回)】
Part1
Part2
最終編

3回にわたってスプレーについてつべこべ掘り下げたわけだけど、そこまで掘り下げるにはやはり静止画像でないと見えないことが多すぎるので、いくら望遠鏡のようなレンズでファインダー越しにサーファーを見ていても、微細に至る動きまではその瞬間にはわからない。現地で、瞬時に消え去ってしまうスプレーを見るときにはおおざっぱに、でかいとか厚いとか薄いとかしょぼいとか、そんなレベルになる。でも動いているときにこそよく見えるものをかわりにじっと見つめているので、そのサーフィンの素性を見誤ることはない。それはレール、つまりボードの傾き方だ。
動いているサーフィンを見るとき、私はずっとレールばかりを見ている。スタイルや手の動きやクセなんかも目には入るけど、本当にその人がどういうサーフィンをしているのかを見ようとするときには、レールと板の傾き方、主に左右、時に前後の傾きをじっと観察している。

エフプラスコラム - ジョーディ・スミス
ジョーディ・スミス(Photo by WSL)

今でこそほとんどいないけど、以前はワールドツアーでもテールを中心に右、左とパンパンピボットターンする選手がいた。子供によくある感じのスタイルというか、スケートボードでは結構よくみられるボード運びかなぁ、と思う。でもサーフィンでは絶対的にNGだ。絶対にNGなんだけど、日本人のサーフィンにはよく見られることも確かだ。あからさまなパチンパチンってピボットではないにせよ、波と水平に板を振り回す感じは多い。引っ掛からないようにノーズ寄りを浮かせて、フィンエリア基点で動かす動き、つまり蹴るやり方。特にトップから下ろす時。そういうときのボードはレールが抜けた状態なので、フラットになっていて、傾きがない。
アップスンでもリップでも、このビボットするスタイルは当然バタバタと音がうるさい。
私はうるさいサーフィンは嫌いだ。
このやり方だとロングボードは決して動かない。第一重くて振れない。そしてハワイのサンセットは乗れない。

集中してレールや板の傾きをずっと見ていると、あ、今レール抜けた、今左右切り替えた、今浮かせてごまかした、と逐一けっこういろんなことがわかる。もちろんそれらはスプレーにも表れるけど、動画や現物を見ているときにはレールを見ているほうがわかりやすい。基本的には私はビーチ観戦しているときにはファイダー越しでも自分の目でも、レールと板の傾きを見ていることが多い。まぁ、つまらないサーフィンの時にはよそ見しかしてないけど(笑)。

エフプラスコラム - コール・ハウシュマンド
コール・ハウシュマンド(Photo by WSL)

90年代にモーメンタム世代がツアーに新風を吹き込んだ頃に、彼らの話をじっと聞いていて、本当に驚くことが多かった。なんでそんなことがわかるのか、何でそこを見るのか、なんでそれを目指すのか、今思えば本当に勉強させてもらった。彼らはツアーにオフレール系のスナップやエアーを持ち込んだけど、彼らが話していたのはいつもレールだった。どこまで深くレールを入れられるか、どこまで長い時間レールを入れ続けていられるか、そういうことを懸命にやっていた。
今でこそ誰もがやるトップから波側のレールごと下に押し下げてくるような、文字通りフェイスをえぐるようなカーブは、どこまでレールを入れ続けていられるかのチャレンジの成果だ。もうだいぶ前になるけど、マーガレットリバーでジョンジョンがやったのが完成形かな、と思う。あのサイズのある広いフェイスに幅広のフルレールトラックのままグワーッてボトムまで引きずり下ろすヤツ。今ではこれがトップレベルの常識になった。

エフプラスコラム - イーサン・ユーイング
イーサン・ユーイング(Photo by joli)

昔と比較してツアーの中でのサーフィンの進化の速度というか、技の変遷は本当に早くなった。その年誰かが新しいことをやってそれがジャッジに評価されれば、翌年にはみんながそれを武器にしてくる。そうやってあのハイレベルの中で切磋琢磨することで、またレベルアップする。世界のトップ5だってまだまだ努力の連続だ。止まっているものはあっという間に振り落とされていく。
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