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「F+xBCMコラボカレンダー解説:ケリー・スレーター」 - F+コラム

2025-12-22 更新
Text by つのだゆき

あと10日で今年も終了って、本当にあっという間ですね。
F+xBCMコラボカレンダー2026版発売中です。お買い忘れのないように。

エフプラスコラム - ケリー・スレーター
Photo by angela zorica

さてカレンダー、4月は定番のケリー・スレーター。
実はカレンダー制作にあたって最初に12か月、12人、誰を選ぶか、というミーティングがあるわけだけど、基本トップ5と女子のトップは入れるわけで、あと6人。日本のカノアとコナーを入れて残る4人となると、なかなか悩むところではあり、そろそろケリーはもう外してもいいんじゃないかという意見もあった。まぁ、確かに時代は変わるので、いつかケリーの入らないカレンダーとかにもなっていくんだろうとは思うものの、昨年ワイルドカードで出場したパイプラインのショットがあったので、入れておこうと思った。
結果的には正解で、皆さんから様々な感想をいただいたりするんだけど、やはりこのケリーの4月がいいという意見は多かった。
まぁ、ケリー世代がドンズバ今のサーフマーケットの主要世代なので、結局ずっとケリーなのかなとも思うし、彼の実績を考えると代わりなんてたぶんあと半世紀は出てこないだろうし、そういうことを除外してもこのショットの美しさというのが人気の源泉なんだろうとは思う。

ハワイ、パイプ特有の波の形に水の色。この波のこの場所でこの瞬間にこの体勢が取れるサーファーってほかにいないのかもしれないと思う。
ジョンジョンだってガブだってジャックロボだって、パイプが得意なサーファーはたくさんいるし、バックハンドのグラブレールはするけど、この美しさというか、あまりにもナチュラルすぎてそのすごさを見落としてしまいそうな完ぺきなバランスってないかなぁ、と思う。スキンヘッドですらその一部であるかのようだ。
ノーズ付近まで入ったレール、おそらくスプレーの一部は彼の身体がフェイスにかかってできているものだし、目線、顔と身体の向き、左右の腕のバランスもぴったりだ。
何より驚くのは、この波のこの場所でこのスピードにいてさえ、体幹がしっかり立っていて、上半身だけ見ればリラックスして両腕広げて立っているかのようだ。まっすぐ。すべてのスポーツに共通の体幹をしっかり保つという状態は、よく例えられるのが頭のてっぺんから串刺しにされたような……というまっすぐな状態なわけだけど、これ、まさに頭のてっぺんから腰までまっすぐに立っていて、重心がぶれることなんて絶対ありえない体勢だと思う。重心のベクトルを矢印で書けば、ザ・垂直。地球の反対側まで伸ばせるレベル(笑)。
バックハンドのグラブレール、手をフェイスに入れて全力ストール、とよくある構図ではあっても、ここまで完成されたというか、もう直しようのない理想的な形ってないと思う。まぁ、だからこそのケリー・スレーターではあるんだけど。

エフプラスコラム - ケリー・スレーター
Photo by snowy

ケリーのすごさというのは、ここ40年間のサーフィンの進化をすべて自分で、あるいは世界の第一線で手にしてきたということだ。若かったころは振っても動かない重たい板でレールワークの基本をしっかり覚え、そこからレールを抜く技、エアー、そしてまたレールワークの革新と、すべてのモダンサーフィンの進化を理論だけでなく、実際に身体に叩き込んだところにある。

今のサーファーは上半身をうまく動かせば、それについて回ってくれる板でサーフィンをスタートする。でもケリーのキャリア初期の時代は、板を傾けてレールを入れないと板が回らない時代だった。今では笑い話として、身体だけオフザリップしてて板はまっすぐ進んでた、みたいな話もあるけど、そういうことが基本をしっかり身に着けることにつながっていった。そういう意味ではラッキーな時代ともいえるけど、それ以上にケリー・スレーターという人はマニアックな努力家なので、ただひたすら、どうすればもっとすごいことができるのかだけを追求してきたと思うし、おそらく今でもそれを続けていると思う。かなわんなぁ。