消えた砂浜
2005-05-04 更新
シップ・アンド・オーシャン財団から発行されている「消えた砂浜・九十九里浜五十年の変遷」という本をご存知だろうか? 千葉県旭市在住の写真家「小関与四郎氏」が、半世紀に渡って追い続けた九十九里浜の人々の暮らしを捉えた貴重ですばらしい写真集である。五十年間の間に変わりゆく九十九里浜の様子が網羅されている。単なる懐古趣味として過去の海辺の光景を楽しむこともひとつの見方なのだが、将来のわが国の沿岸環境を考える上での温故知新の資料という視点から見ると時代とともに移り変わる環境の変化が的確にわかる貴重なドキュメント作品である。財団の所長の「寺島紘士氏」の言葉をお借りすると彼は、このように表現している。
「日本の沿岸が病んでいる」。と言われるようになって久しくなります。白砂青松と詠われた美しい海岸線は、いまやコンクリートの護岸と消波ブロックが並ぶ無機質な姿に変わり果て、かつての豊漁に沸いた各地の浦々に魚影は薄く、わが国が誇った豊かな海はすでに過去のものとなってしまったのです。
この背景には、戦後の度重なる高潮や津波などの災害から国民の生命と財産を守るため、防護を最優先にした施策が採られてきたことがあげられます。この施策自体は成果を上げ、私たちは美しい景観と引き換えに安全で快適な生活を手に入れましたが、それからおよそ五十年を経たいま、失ったものが景観だけではないことに気付くことになったのです。それは、環境の急激な変化による沿岸生態系の破壊と、そして何よりも、人々が海に気軽に接することができる渚という空間を失ってしまったことです。
ところがここ数年、このような疲弊した沿岸環境を巡り、海岸管理のあり方を見直そうとそる新しい動きがみられるようになってきました。特に海岸法など各種法制度の相次ぐ改正に象徴されるように、従来の海岸行政からの脱皮を、いま社会が求め始めていると言えましょう。そして実際に、国や自治体、研究者、市民が一体となって、将来に向けた望ましい海岸づくりについての議論が各地で始まっています。
しかし、どのような海岸を目指すべきかを議論する時、参加している人々の年齢や生活環境によってイメージする海岸の姿はまちまちです。年輩者であれば、かつて生活は厳しくとも豊かな自然に恵まれた時代の海岸、生活向上のため徐々に改変されてゆく過程の海岸、そして荒廃した現在の海岸のすべてを知っているでしょうが、若い世代がイメージできる海岸は、現在の海岸の姿でしかなく、豊かな海とは想像の世界のものでしかありえません。(以上 寺島氏文章)
この彼の論評をどう感じますか? 自然と戯れ自然に敬意を表するサーファーとして・・・・・・
波に乗るだけが、私たちの生きがいなのでしょうか? 確かにそういう時代もあり、ライフスタイルとして培ってきたのも事実です。サーフィンカルチャーは私たちの知らない世界にまで飛び火し、若者文化の形容詞的存在にもなりつつあります。レジェンド達が競って日本におけるサーフィンの向上を目指した時代から大きくその様相は変わってきています。
現在、福島県豊間ポイント・宮崎県ギャップ裏ポイントでも防災か自然破壊か?の議論が成されています。全国各地にもこのような海浜工事はいたるところにあるでしょう。地域とのコンセンサス・行政との係わり合い・サーフィン業界内のつながり・サーファー間のコミュニケーション。その全てを網羅して、将来に向けての海浜環境の提案はサーフライダー・ファウンデーションの使命です。2005年度より、SFJが新体制になりました。従来の理事会トップダウン政策から企画運営委員会を設置して、実際に活動でき、決裁権を持つポジションを作りました。全国に広がるメンバーと多くのサーファーの知恵の結集が、今後のSFJを支え変えていきます。
子供達に、素足で渚を歩く環境をもう一度創りあげましょう。海のすばらしさと厳しさを伝えていきましょう。私たちにできる一歩から!!
(S.F.J.代表・守山倫明)
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参考資料 消えた砂浜 九十九里浜五十年の変遷
シップ・アンド・オーシャン財団 海洋政策研究所編
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発行:日経BP企画
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