【現地コラム】岩手県・浪板⑤
2011-07-02 更新
東北地方を中心に、各地に大きな爪あとを残した「東日本大震災」。現在もなお懸命な復興活動が続いていますが、現地コラムとして各地の現状などを定期的にお届けします。
岩手県・浪板
第5回 娘との再会
川の向こうの釜石の町に着き、中学校へ娘を迎えに行くと、先生から「おばさんが迎えに来て連れて帰った」と聞き、義兄の家までヒッチハイクをして行きました。
そこで娘との久しぶりの再会。
娘は、「パパはもう死んでしまったんじゃないか・・・」と思っていたようで。(T_T)
義兄の家は、プロパンガスのためガスと水道が使え、電気が通っていないだけ。
水道をひねって水が出ているのを見ただけで、何だか感動。
普通のことが普通でなくなってしまった今、普通のことがすごくありがたい。
雪がちらついていたものの、次いつ来れるか分からないため、水道の冷たい水で頭を洗わせてもらった。
電気・水道・ガスが使えず、次に津波が来たら危ないかもしれない家に連れて帰るより、絶対津波が来ない義兄の家に預けていた方が安心!と、しばらく義兄の家に娘を預けることにしました。
義兄の家には、娘と同じ年の女の子と2才下の女の子がいて、みな同じ中学校なので、寂しい思いはしない・・・。
寂しいのは、娘と離れる時の私達親の方
帰る時はお互い少し涙ぐみ、「また来るね」と言って少しのお別れ。
その後、開いている店を探し妻と二人で買出し。
コンビニはお一人様5点限りだけど、ほとんど物がなく二人で飲むゼリーを10個買った。
その後に八百屋に行くと、残っていたのはお菓子だけ。
缶詰やパン、カップラーメンなどは全て売り切れ。
この先どうなるんだろう・・・。不安。。。
避難所に戻り、外で遊んでいた子供たちに買ってきたお菓子を分け、一つ二つの分けてもらった小さいお菓子に喜んでくれる子供たちの笑顔がとても可愛く、皆助かって本当に良かったと感じた。
そして避難所へは、店の客が私達を探しに何人も来てくれた。
歩いて、歩いて、ひたすら歩いて、会いに来てくれる仲間。
こういう時は涙が出る。
会いに来る仲間から、他の仲間たちの無事を聞きホッとする。
通信手段も交通手段も無い今は、自分の足だけがその手段となる。
私達の自宅は無事だったため、いつ泥棒が入るか分からない。余震が続く中に俺は自宅に戻り、自宅の茶の間で寝る事にした。
電気も水もガスもダメ。3月だというのに雪も降っていて寒い。
家の中でダウンを着て、布団をかぶり、6時には真っ暗になるので、夜はラジオを聞きながら布団の中でじっとしてるだけ。
静かな家には、地鳴りの音が鳴り響いてるだけだった。
...続く
--------------------岩手県上閉伊郡大槌町
K-SURF
杉本浩
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