『Vans US Open of Surfing』は今年もブラジリアンが制した!
2014-08-04 更新

カリフォルニアのサーフィン発祥の地、ハンティントンビーチで1994年にスタートした『US Open』
時代を遡ると1982年〜93年は『Op Pro Champions』として先日「J-bay」で時代が蘇るような素晴らしいパーフォーマンスを披露してくれたトム・カレン&オッキーがタイトルを争っていました。
『US Open』に変わった後は、その名の通り北米の選手が主役となり、シェーン・ベシェンとリサ・アンダーソンが初の栄冠を手にし、続いてロブ・マチャド、ケリー・スレーターが歴史に名を刻んでいきます。
その後は世界中からこのタイトルを求めてサーファーが集まり、アンディ・アイアンズ、サニー・ガルシア。ボー・エマートン、タジ・バロウ、ジュリアン・ウィルソンとハワイアン、オージーが表彰台で笑うことも多くなり、2013年はブラジリアンとして初めてアレホ・ムニーツが優勝。
時代と共に選手層が変わり、スポンサーの方も「OP」の後は「Honda」、「Hurley」、「Nike」、昨年からは「Vans」とサーフィン業界の流れを感じさせるものの、全米一高く長い象徴的なピアをバックに数々の名勝負が生み出されたカリフォルニアの伝統的イベントと約50万人の観客を動員する真夏の祭典という位置は不動。
ワールドツアーの1戦として組まれないことが逆にスペシャルなイベントとして定着し、大観衆の前で頂点に立つことは多くの選手のステータスになっています。
今年は出場が予定されていたケリーが欠場しましたが、トップ34から沢山のエントリーがあり、ウィメンズワールドツアー第6戦、ジュニア&ウィメンズジュニア、ジョエル・チューダー主催の『Duct Tape Invitational』など様々なサーフィンイベントにスケートボード、BMXにも力を入れ、カリフォルニアの’今’が凝縮した1週間でした。

イベント期間中は平均2-3ftレンジ(コシ〜ムネ)で日中はこの時期特有のオンショアが吹き込むパターン。
アウトのファーストセクション、厚くなるミドルセクションをパンピングで繋ぎ、インサイドで再び掘れてくるというハンティントンビーチらしい波質。
この波のリズムと調和し、なおかつエアリアルが得意な選手がスコアを伸ばして勝ち上がる展開。
昨年よりも更にブラジリアンの強さが目立ち、フィリッペ・トレドとウィリアン・カルドソがファイナルへ。
『US Open』の歴史上初となるブラジリアン同士の最終カードは、ファーストセクションでノーグラブ・エアーリーバース、インサイドセクションも完璧にメイクするライディングをカーボンコピーのように2本の波で披露したフィリッペ(写真最上部・下)がトータル17.56で優勝。
ニックネームはカンフーパンダ。200ポンド(約90kg)の大柄な身体を活かし、自らもイベントで最も良い波だったというセットでパワフルなトップアクションを繰り返して9.03を叩き出したウィリアンでしたが、バックアップスコアを伸ばすことが出来ず、ファイナルは明らかにフィリッペのペースでした。

「スーパーストーク、そして興奮しているよ!ウィリアンとの素晴らしいヒートになった。彼はコンテスト中、凄いサーフィンをしていたよね。オレの好きなエアー戦に持ち込めたのが勝因さ。南アフリカで挫いた足首の痛みがあったけど、それは気持ちで抑えた。今日のようなコンディションはオレ好み。’US Open’では2011年のジュニアで優勝経験がある。だから、自信を持って1週間を過ごせたよ」とブラジリアンの中でも流暢な英語でインタビューに答えていたフィリッペ。
賞金の100,000USドル(日本円で約1000万円)と6,500ポイントを得て、恐らく夜は盛大なパーティータイムへ。
まだ18歳のフィリッペはお酒抜きですが...。
ちなみに2011年の『US Open』のジュニアでファイナルを戦ったのはコロヘ・アンディーノ、ジョン・ジョン・フローレンス、コナー・コフィン。御存知の通り、コナー以外はワールドツアーで活躍しているトップ選手。
『US Open』のジュニアで結果を残すことは、その後の選手人生にも大きな影響を与えてくるのです。
カリフォルニアのサンディエゴに工場を持つ「SHARPEYE SURFBOARDS」の看板ライダーを務め、最近はサンクレメンテに移住してきたフィリッペ。「毎日、家族とビーチに来て、自分の家の自分のベットで寝起きをする。これが本当に大きな助けになったよ」と笑顔で話していました。

今年も含め、ここ数年はリプレイスメント(補欠)としてワールドツアーはスポット参戦のみ。WQSを中心に活動しているウィリアン(写真下)にとって今回のプライムでの2位は大きな結果と言えるでしょう。
ランキングも67位から一気に12位にジャンプアップして正式なクオリファイのチャンスが巡ってきました。
「この結果は本当に嬉しい。素晴らしいイベントだったよ。最近はサーフィンの調子が良く、全てが良い感じだった。それが今年最高の結果に繋がったのさ。残りのシーズンに向けて大きな自信になる。この表彰台に立てて最高だし、今後のイベントの助けにもなるよ」と話していたウィリアン。

フィリッペよりも10歳年上の彼ですが、世界の舞台に立つ夢を追い続け、それが他のブラジリアンにとっても刺激になっているのだと思います。
才能、努力、運。様々な要素が上手く重なって更にそれ以上のプラスαが無いと手に入れることが出来ないトップ34のチケット。
日本からも大原洋人がチャレンジしていましたが、R1で敗退。
アメリカ国籍ながら日本人の両親を持つ五十嵐カノアはR4でマット・バンティング(AUS)と対戦し、クロスゲームの末に敗れています。
次のメンズASPイベントは8月15日〜26日にタヒチ・チョープーで開催される第7戦『Billabong Pro Teahupoo』です。

プライム
『Vans US Open of Surfing』結果
1位 フィリッペ・トレド(BRA)
2位 ウィリアン・カルドソ(BRA)
3位 アダム・メリング(AUS)、ブレット・シンプソン(USA)
5位 マキシム・ハシーノ(FRA),ジョーディ・スミス(ZAF)、マット・バンティング(AUS)、ギャレット・パークス(AUS)
『Vans US Open of Surfing』公式サイト
http://www.vansusopenofsurfing.com/2014(PC用)
photo: ASP Covered Images
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